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シャープ再生

2017年4月12日
シャープ再生

経営再建中のシャープ 予想以上の好決算

 経済は生きている。何が起きるか分からない。「一寸先は闇」と言った方が当たっているかもしれない。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って経営再建中のシャープの2016年度第3四半期(2016年4月~12月)決算は、売上高が1兆4912億円、営業利益は189億円で、一般の予想をはるかに上回る好決算となったのだ。

営業利益373億円 3期ぶりに営業黒字 業績予想を上方修正

 売上高は前年同期比23%減となったものの、営業黒字化を達成した。好調な業績を受け、シャープ同社は通期の業績予想を上方修正した。売上高は2兆500億円(前回予想2兆円)、営業利益373億円(同257億円)とし、3期ぶりに営業黒字に転換する見通しだという。純損益は372億円の赤字で、2016年11月時点の予想418億円より赤字幅が縮んだ。リストラに伴うコスト削減が、想定より進んだためだという。好業績の要因を、同社は大幅なリストラによる「コスト削減」と「この期間が円高基調だったこと」とみているようだが、亀山工場(三重県亀山市)をはじめとする同社の高い技術力と高品質商品の製造力を見落とせない。亀山工場から出荷された液晶テレビはかつて、高品質な日本の技術の代表格「亀山ブランド」として、世界市場を席巻した。

亀山工場、縮小から一転 増産体制へ

 その技術力は鴻海精密工業の傘下に入ってからもそのまま受け継がれ、需要は高まるばかり。これを受けて、同社は一時縮小していた亀山工場の生産体制を強化することにした。亀山工場で働く従業員を、下請け企業の従業員を含めて倍増し、約4000人規模にする方針を明らかにしたのだ。
 スマートフォン向けのカメラ部品の生産を順次増やす計画という。2016年度第3四半期決算で売上高が減少したのには、スマートフォンやテレビ向けの液晶パネルの販売減少が響いたとみられ、この反省に立って増産への方針変換と言えそうだ。

親会社の鴻海、 純利益過去最高

 シャープの好業績は親会社の決算にも好影響を与えたようだ。鴻海精密工業の決算は純利益が前年比11.22%増の1486億台湾元(約5470億円)で、台湾の中央通信社によると過去最高となったという。同社の決算発表ではシャープを買収したことが業績に響くかが注目されていたが、シャープの「買収効果」は予想以上に大きかったようだ。

鴻海「東芝メモリ」の買収、日本企業の応札なし

 業買収と言えばもう一つ見逃せない事態が起きている。不正経理などで経営危機を迎えている東芝だ。東芝が看板の記憶媒体フラッシュメモリー部門を分社化してつくった新会社「東芝メモリ」を売却する入札には、海外の競合企業やファンド約10社が応札したとみられ、2兆円以上の提案もあったという。しかし有力な日本企業の参加はなかったようだ。このため政府主導で日本企業連合を組む案も浮上しているが、難航しているという。東芝のフラッシュメモリーは世界的に評価が高く、事業価値は2兆円規模とされており、日本企業は尻込みしたとみられる。応札企業の中には、シャープの買収で味をしめた(?)鴻海精密工業も入っているという。

 われわれ日本人は、「手中にあるもの」あるいは「身近にあるもの」の価値を見落としがちで、なくなってみて後悔するきらいがあるようだ。今回の「東芝メモリ」の件も、その再現とならないことを祈るばかりだ。立派なお手本を、シャープの”再生”が示しているのだから…。日本の高度な技術がまたも海外流出の危機を迎えようとしているのだが。

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