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切れ味抜群トヨタの”変化球”

2017年4月19日
切れ味抜群トヨタの”変化球”

発表文に大統領の歓迎コメント

 企業経営には、真正面からの「直球勝負」だけでなく、「変化球」も必要なようだ。これまで直球一本だったあのトヨタ自動車が、米国ケンタッキー工場に新規投資をするという発表文に、トヨタを目の敵のようにして新工場の建設を迫っていたトランプ大統領の歓迎コメントを入れたのだ。

ロビー活動が奏功 トランプ氏 ”軟化”

 この発表文は、北米トヨタが2017年4月10日朝(日本時間10日夜)、ホームページに掲載したもので、13億3万ドル(約1470億円)に上る新規投資を「ケンタッキー工場の歴史上で最大」などと説明した後、トランプ大統領のコメントが4行にわたって引用されている。一国の大統領のコメントを、一企業が引用するにはそれなりの根まわしが必要なことは言うまでもない。トヨタのロビー活動でトランプ政権から一定の理解を取り付けた成果であることは明らかだろう。

 トヨタは、与党・共和党の議員などあらゆるパイプを通じて大統領に接触を図り、「トヨタの米国への貢献」を説明し、理解を求めてきたと言われる。これが奏功してのトランプ大統領の”軟化”とみられるが、米国での新工場建設を求めるトランプ氏が圧力を弱めることにつながるかかどうかは未知数だ。

まだ続く? トランプ氏の”剛速球”

 トランプ大統領もさる者、コメントは、トヨタの新規投資を「経済環境の大幅な向上を示す」と、自身の手柄としてちゃっかりアピールしている。米フォード・モーターがメキシコでの工場建設を撤回した際などに示した「サンキュー」の言葉は見当たらない。トランプ大統領の支持層である白人労働者は雇用増への期待が大きく、トランプ大統領が米工場建設の要求をあきらめたとは考えにくいからだ。
 トランプ大統領の日米貿易をめぐって投げてくる”剛速球”は米国への新工場建設だけではない。日米両政府が貿易のあり方などを話し合う「ハイレベル経済対話」の初会合では、自動車分野の交渉が焦点になるとみられる。

 トランプ政権は米国車、いわゆる「アメ車」が日本で売れない理由は「日本独自の安全基準や検査手続きなどが障害になっているからだ」と主張している。日本では「アメ車が売れないのは、単に魅力的なモデルが少ないからだ」という指摘が根強いのだが、それをトランプ大統領に納得させるには骨が折れそうだ。ここは一番、トヨタがケンタッキーキー工場の新規投資のアピールで見せた”変化球”の出番かもしれない。

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