日本製鉄、国内3事業所に8600億円投資
日本製鉄は5月30日、国内3事業所に約8600億円を投じて高炉プロセスから電炉プロセスへ転換すると発表した。
同社は2021年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表し、「大型電炉での高級鋼製造」「水素による還元鉄製造」「高炉水素還元」の3技術によりカーボンニュートラルの実現を目指している。今回の投資は、GX推進法に基づく「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業(鉄鋼)」に令和7年度から令和11年度の期間で採択されたことを受けて実施される。
電炉プロセスへの転換はCO₂の大幅削減が期待できるが、多額の設備投資に加え、原料や電力コストの増加など生産コストの上昇が避けられない。こうした背景から、投資回収の予見性を確保するためには、CO₂削減価値の適正評価とその対価支払いによるGXスチール市場の健全な形成が重要とされている。
同社は、経済産業省主催の「GX推進のためのグリーン鉄研究会」において、市場形成と拡大に向けた官民連携の必要性を提案しており、GX2040ビジョンに示された「GX価値の見える化」「GX製品の調達」「GX製品の需要拡大」の早期具体化を引き続き強く要望していく。
■ 設備投資概要
◇ 九州製鉄所 八幡地区
所在地:福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号
投資内容:電炉1基新設
付帯・関連設備:高級鋼製造対策、物流対策、電源対策、下工程エネルギー対策等を含む
投資額:6,302億円
政府支援額(上限):1,799億円
生産能力:約200万トン/年
生産開始:2029年度下期
◇ 瀬戸内製鉄所 広畑地区
所在地:兵庫県姫路市広畑区富士町1番地
投資内容:電炉1基増設
付帯・関連設備:高級鋼製造対策、物流対策、電源対策、下工程エネルギー対策等を含む
投資額:1,400億円
政府支援額(上限):428億円
生産能力:約50万トン/年
生産開始:2029年度下期
◇ 山口製鉄所(周南)
所在地:山口県周南市野村南町4976番地
投資内容:電炉1基改造・再稼働
付帯・関連設備:高級鋼製造対策、物流対策、電源対策、下工程エネルギー対策等を含む
投資額:985億円
政府支援額(上限):287億円
生産能力:約40万トン/年
生産開始:2028年度下期
◇ 合計
電炉数:電炉3基(新設・増設・改造・再稼働)
投資額合計:8,687億円
政府支援額(上限)合計:2,514億円
生産能力合計:約290万トン/年
生産開始時期:~2029年度