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IoTはモノ作りの救世主になれるか、研究開発は鈍化も

2016年12月12日
IoTはモノ作りの救世主になれるか、研究開発は鈍化も

 東芝の不正会計やシャープの台湾企業傘下入りなど、経営不振にあえぐ日本のモノ作り企業にあって、モノをインターネットにつなげる技術「IoT」(internet of things)が、次の市場を切り拓くと期待されて久しい。そんな中、「ほとんど唯一の無傷の会社」であるパナソニックの製品開発が堅調だ。恐らく近い将来「IoTじゃない家電なんて信じられない」という時代が到来するだろう。ただ研究開発への投資では鈍化しているという指標もでている。

家電を進化させるパナソニック

 パナソニックの炊飯器「Wおどり炊き」は、コシヒカリやひとめぼれなど、米のブランドごとにベストの炊き方を設定できる優れもの。この炊飯器のどこがIoTなのかというと、スマホを使って炊飯器を操作できる点だ。これだけ聞くと「炊飯器の操作機能をスマホに移しただけじゃないか」と感じるかもしれない。しかしコメ炊き機能と操作機能を分離することで、炊飯器をコメ炊き機能に特化できる。「よりおいしいご飯が食べられる」ようになるわけで、ネットとの接続でそれが可能になったのである。
 パナソニックのテレビ「ディーガ」もIoT化済みだ。スマホがリモコンとなり、スマホでディーガを操作できるのだが、これで驚く人はいないだろう。いまのディーガはさらに進化していて、スマホで撮影した写真のデータを、ディーガに送信し保存できるのである。IoT化家電は、究極の付加価値家電といえ、Wおどり炊きは10万円以上する。消費者の食指が動けば、メーカーの悲願である安売り競争から脱却できる。

社会インフラや大型投資を生み出す

 自動車分野では、トヨタがKDDIとタッグを組んで、自動車が自動的に道路の情報を集める技術を開発中である。渋滞情報をどんどんクラウドに送信すれば、正確な渋滞回避経路を割り出すことができる。自動運転技術への応用も期待できる。
 また2016年のIoTシーンで最も注目を集めたのは、やはりソフトバンクの孫正義社長だった。イギリスの半導体設計「アーム・ホールディングス」を3兆3千億円で買収した。

 現在のIoTは、従来の製品に付加価値を付けているだけのものが多いが、今後IoTがモノ作りそのものになる可能性がある。そのような時代が到来すれば、半導体設計を握る企業が業界のリーダーとなりうる。ネット業界におけるグーグルや、eコマースのアマゾンの地位を築けるというわけだ。

 このように社会インフラや大型投資を生み出しているIoTは、最もホットな経済ニュースといえる。

企業のIoT対応は3割にとどまる

 日本政策投資銀行は2016年8月、2016年度の国内の設備投資計画が、前年度実績を10.9%上回ったと発表した。ただ、「研究開発投資を今後増やす」とした企業は半数以下にとどまり、IoTへの対応に取り組んでいる企業も3割しかなかった。
 このことから、多くの企業はIoTへの先行投資に慎重であることが分かる。ただ、経済産業省は「IoTは2020年の200兆円規模の経済価値を創出する」とみている。2013年の市場規模は30兆円なので、6.6倍に急成長するという読みである。IoTで先行するアメリカ、ドイツに追いつき、猛烈に追随してくる中国、韓国を引き離すには、設備投資や研究開発投資を拡大させる必要があるだろう。(設備投資ジャーナル 編集部)

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